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米づくりの理想郷、日本百名山「苗場山」の
大自然を活かした米作り

樋口 貴幸さん / 麓 新潟県 中魚沼郡 津南町

農薬5割減・化学肥料5割減栽培

米・食味分析鑑定コンクール:
金賞

津南町食味分析鑑定コンクール:
最優秀賞

郷を守る。先代たちが守り続けた大切な農地を引き継ぐ

麓

麓

産地である新潟県津南町は、自然環境と農業のバランスが保たれ地域に与えられる「環境王国」に認定されている町です。
長野県との境にある山間地の町で3~4mの積雪のある全国で有数の豪雪地帯でもあり、冬の間は雪に閉じ込められることもありますが、地下に浸透した雪解け水が大地に湧き出し、耕地を潤してくれるので、作物をつくるのに良い自然環境があります。

そんな町で実家を継いで農業をやってきましたが、時が経つにつれて高齢化や担い手不足などの理由で知っている農家がどんどん辞めていき、荒れた田畑が目立つようになりました。
先代たちが残してくれたこの肥沃な農地を、これから永続的に守っていくにはどうしたらいいか、そんな同じ危機感をもった仲間たちと、「限界を迎えた農家の受け皿をつくる」という想いで会社を作りました。

地元の農地を守るには、「守るべきこと」と「挑戦すること」の2つが重要だと考え、「守るべきこと」とは、高齢化し跡継ぎのいない農家の作業を請負うことで、荒廃する農地を減らし、農業が続けられる環境を守っていくこと。
「挑戦すること」とは、品評会などに挑戦し技術を競ったり、新しい農法に挑戦したりすることで周りの農家が「自分たちも、やってみよう」と感化され、地域全体で品質向上に取り組める環境を作ることです。

今は、地元の米農家が集まる「稲作生産改善組合」の組合長を務めたり、魚沼産コシヒカリの品質向上を目指す若手農家のグループ「魚沼ブラザーズ」などで、地域全体の品質向上に取り組んでいます。

量より品質。収穫量を減らし、稲穂一本一本に栄養を与える

麓

美味しいお米を作るには、その田んぼが持つ地力をより高めること、その土の養分を稲一本一本に十分吸収させることが重要だと思います。
雪と技を育てている田んぼは標高600mくらいの山の中にあり、昼夜の寒暖差が大きく、稲の光合成 に必要な鉄分が豊富で元々良い土壌なのですが、毎年土壌分析を行い、稲の生育に不足している養分を確認しながら、より稲の生育にいい土作りを行っています。
稲の成長のみを求めて、ただ過剰に肥料は与えるのではなく、本来土壌が持つ地力と稲の成長のバランスを見極めながら、稲が欲しがっているタイミングで適量を与えることが、稲にストレスをかけず健康に育ってくれます。
また、稲穂一本一本に土壌の栄養分を行き渡らせるため、田んぼ1枚当たりの作付け量を7割程度に減らすなど、収穫量を求めずお米の生育を一番に優先した米作りをしています。

田んぼの生物たちが、稲を丈夫にする

麓

化学肥料の効果は長続きしないので、稲の成長期間に十分な栄養を与えることができません。お米を美味しくするには、手間は掛りますが農薬などを減らし、田んぼに住む微生物に活躍してもらって、常に栄養豊富な土壌を保ってもらうことが必要です。
必要最低限の量に抑えることで、田んぼに住むタガメやオタマジャクシなどの生物たちが活発に動き回り、土壌に養分が蓄えられ、丈夫な稲を育てることができます。

高い品質を追求し、持続可能な農業を目指す。

麓

今の農業は儲からなくて、若手が採用できなくて、そこに十分なお金が払えないという「負のサイクル」になってしまっているのですが、それをひっくり返すためにも、他にない高い品質のものを作って、買う方々にその価値を認めてもらい、安定した収入を得られ、新しい若手が採用でき、みんな生き生き働ける。そんな農業を目指したいと思っています。
毎年コンクールに挑戦し、全国のお米生産者たちと技術を競っているのは、そんな想いからです。
特に津南町のような山の中では広く大きい農地がないため、北海道のような大型機械を使った効率の良い大量生産ができません。
なので山間地ならではの恵まれた自然環境を活かしつつ、一つ一つを丁寧に手間暇をかけながら、品質では他には負けない美味しいお米を今後も追求していきます。